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入力インピーダンスってなに?

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前の投稿に引き続き、基本をおさらい。 脳波でも筋電でも、はかるものは電位差(電圧つまり単位はV(ボルト))だ。 生体内の神経細胞が発する電位差は非常に小さい! 脳波なら、数十マイクロボルト。 筋電は発揮している力によるけれど、数百マイクロボルト程度である。 そんな微弱な信号を計測するために、脳波(筋電)計がある! 皮膚上に貼付した電極間の電位差を、アンプによって増幅し、サンプリングする機器だ。 計測工学の超基礎だけれど、アンプには入力インピーダンスというものがある。 基本的には、入力インピーダンスは高いほど良い!とされている。 さて、入力インピーダンスってなんだろう? インピーダンス、日本語で言うと抵抗のことである。単位はΩ(オーム)だ。 脳波計測のときにはよく、「インピーダンス(抵抗)を落としましょう」と言ったりする。インピーダンスを落とさないと、ノイズが大きくちゃんと脳波を計測できない。 このインピーダンスは、正確には「接触インピーダンス」という。 入力インピーダンス、そして接触インピーダンス。 それぞれいったいどんな抵抗なんだろう? 抵抗はギザギザで書く派です(笑) この回路は、電極を設置した頭皮上を簡略化したものと思ってほしい。 接触インピーダンス(Zs)とは、皮膚の角質などの組織の持っている抵抗値を示している。一方で、入力インピーダンス(Zi)は脳波計内部にある抵抗だ。 知りたい脳波(電位差)はEとする。そして、アンプに入る電位差はVである。理想は、V=Eとなることだ。しかし、接触インピーダンスがそれを許してくれない。 この回路から、導かれるVは式の通りとなる(分圧の法則だ!)。 この式が意味するところを考えよう。 もし、接触インピーダンスと入力インピーダンスが同じだったら、V=E/2となってしまう。つまり、計測できる電圧は半減することとなる。Zi/(Zs+Zi)を1に近づけることが出来れば、VはEに近づく。そのためには、Ziを大きく(高いほど良い!とはこういうことか!)、Zsを小さくすることである。 入力インピーダンスはアンプの性能次第だ。 一方で接触インピーダンスは、計測するときに皮膚の角質を落としたりといった前処理によって、下げることができる。 ここから余談......

頭皮脳波はなにを見ている?

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最近、いろいろと基本をおさらいしていたので、ここでまとめておこうと思う。 人の脳活動を計測する手法はいろいろある。 非侵襲なものだと、fMRI、PET、EEG、MEG、NIRS… 侵襲的なものだと、ECoG、LFPなど fMRI、PET、NIRSというのは神経活動にともなう脳血流を見る手法で、 それ以外の手法は、神経の電気的な活動を直接計測している。 ここでは、EEG(頭皮脳波)などの神経の電気的な活動の測定法について考える。 細胞外記録とは 神経細胞は、シナプスを介して、他の神経細胞と連結している。 神経活動といっているのは、神経の発火や膜電位の変化のことだけど、 もちろん、神経細胞に電極を刺して計る(細胞内記録)のように、膜電位を直接記録することは生体ではできない。人を対象とした計測で用いる手法は程度差こそあれ、細胞外記録になる。 ECoG、 LFP 脳表に設置した電極から計測するECoG(皮質脳波)や、脳に刺入した電極から計測するLFP(局所フィールド電位)は、局所的ではあるものの時間分解能も空間分解能も高い信号が得られる。 しかし、てんかんやパーキンソン病などの治療のために、電極を外科手術によって留置した患者さんの協力を得られない限り、計測はできない。 EEG そこで、一般健常者でも患者さんでも、安価(比較的に!)な設備で神経活動を測定できる手法はEEG(頭皮脳波、Electroencephalogram)である。 EEGは頭皮に電極を貼付し、その電極から微弱な電位変化を記録する手法だ。 どれくらい微弱かというと、せいぜい数十マイクロボルト程度。商用の交流電源は100Vなので、だいたいそれの1000万分の1だ。 というのも、脳とEEG電極は、頭皮、頭蓋、髄膜などの組織によって隔てられている。 EEGによる神経活動の計測は、 例えるなら、東京ドームの外から観客の拍手や歓声を聞くようなものだ。 個々の観客がばらばらに手を叩いても、外からはわからない。 ホームランでも打てば、観客は一斉に歓声をあげるので、外からもわかるだろう。 観客(神経細胞)が一斉に叫べば、外の人(脳波計測)にも聞こえる これはつまり、神経が一斉に(同期して)発火すれば、EEGでも計測できるということだ。 正確に...