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シンポジウムで聞いた話あれこれ

先日、神保町の一橋講堂で開催されていた包括脳ネットワーク・冬のシンポジウムで話を聞いてきました。 まず、研究以外のところでの収穫でいうと… アウトリーチ活動やサイエンスコミュニケーションなどについて、科学者がどのように社会的役割を果たせばよいだろうか、という議題で様々な分野の専門家の話を聞くことが出来ました。 おおざっぱにまとめると、アウトリーチにせよ、サイエンスコミュニケーションにせよ、科学者の社会貢献のためには、以下の二つが課題と多くの方が感じているようです。 ・異分野とのコミュニケーション ・それを可能にする土台作り の二つです。 一般的に、チーム内の人材の多様性が増すほど、平均した成果は落ちる傾向にあるそうです。確かに、おんなじ分野の人ばかりで集まっていたほうが、みんな思考回路が似ているわけだからスムーズに仕事は進むでしょう(そこそこの成果が出やすい!!)。しかし、多様性が増すほどに、大きなイノベーションを起こす可能性は増えていく!(だが失敗も多い!) おんなじような人たちでは、ドツボにはまってしまうところも、違う視点・違うバックグラウンドを持った人たちが集まれば、break throughできる!ということです。 ということで今、ネットワーク型の研究開発が必要になってきている!そうです。 研究成果が社会で実際に広く使われるようになることを”社会実装”というんですが、社会実装のためには、論文や特許だけでなく、薬事承認やビジネスとして成り立つか等の多くの課題をクリアしなくてはいけません。社会実装を視野に入れた研究開発には、ネットワーク型の研究開発が必要なのです。 製薬でも似たようなことが昨今の課題だそうです。 昔は、製薬というと低分子医薬が主流でした。低分子医薬の開発には少数の超優秀なケミストが必要とされる時代でした。その後、抗体医薬の時代になると、今度はバイオテクノロジーが必要に。そして最近は中分子医薬(ペプチドや核酸など)、さらには細胞・遺伝子治療、再生医療の時代へと移っていくでしょう。こうなっていくと、バイオテクノロジーはもちろんですが、そのうえ病態生理の全体像の理解も必要になってきます。さらには、ready madeからcustom madeへというもの重大なポイント。製薬企業は自前の開発基盤では限界が...

谷川岳西黒尾根 2015年12月12日

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今シーズン初の雪山として、谷川岳に行ってきました。 今年は雪がなかなか降らず、12月も半ばとなりましたが、ふもとは積雪ゼロ。 天神平もほぼなし。スキー場が開業できないという悲惨な事態です。 日程:12/12(土)前夜泊日帰り 行程:西黒尾根登山口9:00~ラクダの背11:00~トマノ耳12:30~天神平14:20 今回は、雪山初心者の後輩と二人。後輩は今まで、春の北横岳と木曽駒に連れてった。どっちもロープウェイ使っていたので、まともに登るのはほぼ初めて。 金曜の夜、満員の湘南新宿ラインに大荷物で乗り込む。電車を乗り継ぎ、水上駅に到着した。数年前に来た時とは見違えるほど駅舎がきれいになっていた。駅寝にぴったりのスペースもあり、とても快適に休むことが出来た。学生らしき四人組もいた。 翌朝7時ごろ目が覚める。この時期にしても寒くない。 西黒尾根中腹からの谷川岳 朝一のバスにのって谷川岳ロープウェイに向かう。電車で土合という選択肢もあるけど、あの階段を登ることを考えると、水上からバスが断然賢い選択だろう。 ロープウェイから少し歩くと、西黒尾根登山口に着く。ぼくら以外にも数名の登山者がいる。登山口付近にはまったく雪が見当たらない。天気はとても良く雲一つない晴天。太陽が昇るにしたがって気温もあがり、シャツ一枚でもいいくらい。 頂上直下 ギアダウン中の後輩 例年なら、登山口にもどっさり雪が積もっているのだが、今年は1500m付近になってようやく踏みしめることの出来る積雪量だ。順調に高度を稼ぎ11時頃にはラクダの背に到着した。ここでアイゼンを装着。雪がついていないので鎖場も特に不安はない。 その後はやせ尾根、急登と続く。ここでは適度に雪がついているおかげでむしろ歩きやすい。 歩きやすいのと、天気もいいのとで、テンションが上がり、思わず歩が進む。逆に雪が出てきて後輩はギアダウン… 気がつくとあいだがかなり空いている! 頂上から トマノ耳についたのは12:30、3時間半で登ってしまった。頂上および肩の小屋付近では多くの登山者と出会った。頂上付近で半袖の人がいてさすがに驚いた!さすがにそれは寒いでしょ!! 頂上についたもののかなり疲弊している後輩。ちと飛ばしすぎたことを反省する。肩の小屋でしばらく休憩して、ようやく元気に...

ニューロンの数に反比例する必要睡眠時間 -More neurons mean less need for sleep-

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ニューロンの数に反比例する必要睡眠時間 -More neurons mean less need for sleep- サイエンス誌の記事にこんなのがありました。他誌からのピックアップ記事です。 http://www.sciencemag.org/content/350/6264/1052.1.full?et_rid=51968542&et_cid=131075 睡眠というのは動物にとって必要不可欠です。しかし、種によって一日の必要睡眠時間は大きく異なっています。コウモリは一日に20時間も眠るのに対して、ゾウやキリンは3,4時間ほどしか眠らないことが知られています (Zepelin & Rechtschaffen, Brain Behav. Evol 1974; Cappelini et al., Evolution , 2008) 。ネコは12,13時間、イヌで10時間程度、ヒトは7,8時間でしょうから哺乳類の体のサイズと睡眠時間にはどうやら関連がありそうですね。 体が大きい動物ほどより多くのエネルギーを必要とするため、食事により長く時間をかける必要があります。そのため、大型の動物ほど活動時間を増やす必要があり、その反面睡眠時間は減るというのが一般的な解釈です。低カロリーの植物を主食とする草食動物ほど、その傾向が強いようです(ゾウやキリンの睡眠時間が極度に少ない理由)。しかし、この説明では片手落ちです。自然選択の結果、なぜそのように進化したのか説明が不十分ですし、メカニズムについてはなんら言及できていません。 そもそも、睡眠というのはなぜ必要なのでしょうか? 学習の促進、記憶の定着など、睡眠というのは脳の機能において多大な利益をもたらしてくれることはよく知られています (Walker & Stickgold, Neuron , 2004; Diekelmann & Born, Nat. Rev. Neurosci. , 2010; Gilestro et al., Science , 2009) 。そして、最近の研究成果から日中に蓄積した代謝産物を一掃するのが睡眠の大事な役割であることがわかりました (Xie et al., Science , 2013) 。代謝産物には、睡眠を誘導する物質もあるので、脳の活...