読んだ本メモ⑱ 「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」 大栗博司著 幻冬舎新書

”重力とは何か”

当たり前すぎて、普段気にも留めませんが、私たちが地球から飛び出てしまうことがないのは、重力があるから。地球上のどこに行っても、たとえ空を飛んだって、重力は私たちに働いている。

そんな重力が、実は”幻想”である、と言われたら簡単には信じられませんよね?

相対性理論、量子力学、超弦理論、、、、
この世界を理解する統一理論を探る、物理学の歴史のお話を、
著者の大栗博司さんは、わかりやすく、かつ、ごまかさすことなく、教えてくれます。

私は自分自身がサイエンスに携わっている身なので、日々科学研究の意義について考えています。

科学の話は聞いていてワクワクするし、人間には程度の差こそあれ等しく好奇心があると私は思っています。ですので、この世界の仕組みを解き明かすこと、さらにその発見を社会に広めること、そのものに本質的な意義があると考えています。

本書の冒頭でもこのように語られています。
1969年、フェルミ国立加速器研究所の初代所長のロバート・ウィルソンが、米国議会に証人として呼ばれて、「素粒子加速器の建設は、わが国の国防にどのように役立つのか」と問われたことがあります。(中略)当時のお金で何億ドルもの予算をかけて建設するのですから、役に立たないのでは国民の納得を得られません。
 予算がみとめられるかどうかの瀬戸際で、ウィルソンはこう答えました。
「この加速器は、直接には国防の役には立ちません。しかし、我が国を守るに足る国にすることに役立ちます」
 ウィルソンの答え方も立派ながら、これで納得して計画を通した議会も立派だと思います。事実、フェルミ研究所の加速器は、(中略)長いあいだ世界で最も強力な加速器として活躍し、世界に誇るべき大発見をいくつも成し遂げました。
 さらに言えば、科学の発展は一国の名をあげるだけではありません。科学は、合理的な考えを広めることで、人類を迷信や偏見から解放し、宇宙や生命の神秘を明らかにすることで、私たちの世界を豊かなものにしてきました。「科学の目的は、人類の精神の栄光である」という言葉があるように、科学はそれ自体に価値があり、それを生み出すことには大きな意義があるのです。

とはいっても、
その発見は人間社会にとってどんな役に立つのか?
病気が治るのか?、交通事故が減るのか?、それとも地震を予知できるのか?
そういった、社会を豊かに、不便を便利に、するための研究が強く求められているのも、もちろん理解しています。
(ちなみに、こちらの研究はサイエンスではなく、エンジニアリングと呼ばれます。)

しかし、科学研究の成果が実社会に活かせないわけではありません。
直接的ではありませんが、いろんな技術のコアとなる理論を支えているのです。

重力の研究も、これまでさまざまな形で「役に立つ技術」を生み出してきました。たとえば、人工衛星によるGPS(全地球測位システム)。ニュートンの万有引力の法則を知らなければ、人工衛星を飛ばすことができなかったことは容易に想像できるでしょうが、実はアインシュタインの相対論がなければGPSで距離を精確に測定することもできなかったはずです。


科学研究、物理学研究の意義を認識したところで、
重力とは何か、主旨に移りましょう。

アインシュタインが登場する前まで、物理学の二本柱になっていた理論がありました。ニュートン力学と、マクスウェルの電磁気学です。
 この二つは、同じ物理学の理論ではありますが、それぞれ別々に発展しました。ニュートンが「天界」と「地上」の法則を統一して物質の運動を説明したのに対して、マクスウェルは「電気」と「磁気」を統一し、その力の働きを解き明かしたのです。
 ところが、この二つの理論には、ある点で大きな矛盾がありました。「光の速さ」に関する問題です。

ニュートン力学とマクスウェルの電磁気学の矛盾を、解消した理論こそが、アインシュタインの「特殊相対論」です。物理学ではしばしば、ある理論をスケールの異なる世界に持ち込むなど、手荒に取り扱ってみるそうです。そうすることでその理論の一般性を確かめるわけです。結果的に、理論が成り立たない条件、つまりその理論の限界がわかったのであれば、その限界を超えるさらなる統一理論が求められる、というわけです。

ニュートンとマクスウェルの理論の矛盾を統一したのは、アインシュタインの特殊相対論。
さらにアインシュタインは一般相対論によって、重力の仕組みを解明しました。(重力は質量が生み出す空間の歪み!)

さらに時代が進むと、話は重力の仕組みに留まりません。宇宙の始まり、ブラックホールについて議論が進みます。こうなってくるとアインシュタインの理論にも限界が出てきます。
アインシュタインの相対論とともに、20世紀の物理学を支えるもう一つの理論であった量子力学との間にも矛盾が生じます。ここで、登場するのが南部陽一郎さんらがノーベル賞を受賞した功績である「超弦理論」につながります。

というふうに、物理学の歴史は、究極の統一理論に向けて進んでいきます。
いやはや、これではいたちごっこというか、果たして完成はあるのでしょうか?
このあたりの内容は、本書第六章「宇宙玉ねぎの芯に迫る」で明かされています。

重力ってなんなんだろう?という疑問を胸に、本書を手に取りましたが、そこには深遠な物理学の世界が待っていました。重力のみならず、宇宙の成り立ちに迫る、物理学のフロンティアついて知ることができました。

後半くらいから、正直理解が追い付かない箇所もありました。
結局、超弦理論って・・・?
是非もう一度読みたい、一冊です。


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