読んだ本メモ③ 「エンデュアランス号漂流記」アーネスト・シャクルトン
アーネスト・シャクルトン著、木村義昌/谷口善也訳「エンデュアランス号漂流記」を読みました。 著者のアーネスト・シャクルトン氏は1874年生まれ、英国の極地探検家。 1911年、アムンゼン率いるノルウェー隊が、スコット率いるイギリス隊にわずかに先んじて、南極点への到達を成功させたため、南極大陸探検における一大目標は、海から海への横断を成し遂げることとなりました。 時は第一次世界大戦のさなか、シャクルトン氏は隊長として、南極大陸横断の探検を成功させるべく出発します。しかし、厳しいウェッデル海の浮氷に阻まれ、大陸に上陸することすらできず、漂流。さらには、エンデュアランス号を失い浮氷での生活を強いられ、救援を求めるためにボートで厳しい南太平洋を横断したりと、筆舌に尽くしがたい苦労をします。2年近くもの漂流生活の末に、船員全員が一人も欠けることなく、生還することができたのは奇跡的であり、隊長のシャクルトンの賢明な判断と隊員の優秀さによるものでしょう。 ここからは、私の個人的な意見と感想です。 本作品は、シャクルトン氏や隊員の日誌をもとにまとめられた航海記録であり、その詳細がよくわかります。まず、目を見張るのが装備や道具が現代といかに異なっているかという点です。約100年前ですので、よくよく考えてみれば当然ですが、港を離れれば基地との通信はできませんし、船は木造の帆船です。寝袋はトナカイの毛皮製、着るものも毛皮やウール製だったでしょう、現代の化繊と違い、保温力も劣り、乾きにくく、重たいはずです。そんな装備で、零下30℃にもなる南極大陸周辺の海で生活するということがどれほど過酷か、想像を絶します。 私は雪山登山をしますが、装備の質が格段に向上した現代、しかも南極ほど厳しい気象条件ではない日本ですら、自然の厳しさを幾度となく実感してきました。冬期の登山で気を使うこととして、衣服を濡らさないということがあります。濡れてしまうと凍りついてしまい、そんなものを着ていては凍傷を負いかねません。しかし、海上では濡らさないというのはかなり難しいはず、というかまず無理でしょう。本作の中でも、衣服を濡らしてしまい完璧に乾くまで2週間かかったというような記述がありました。隊員は多かれ少なかれ凍傷を負っていたでしょうし、かなり衰弱していた隊員もいたようです。 隊員全員28人を...