読んだ本メモ⑮ 「アルケミスト -夢を旅した少年-」 パウロ・コエーリョ著 山川紘矢、山川亜希子訳
旅の途中に読むのならと人に勧められたのが、ブラジルの作家パウロ・コエーリョの大ベストセラー「アルケミスト -夢を旅した少年-」。本当に旅にぴったりの作品だったし、なにより読んでよかったと思える作品だ。

主人公の少年サンチャゴは、夢で見たお告げに従って、アンダルシアからエジプトのピラミッドへと旅に出る。それは人生そのものと言えるほど壮大な旅だ。そもそも旅をしたいという理由から羊飼いになったサンチャゴは、羊のことそしてアンダルシアの平原のことなら、なんでも知っていたし、羊飼いという仕事も愛していた。しかしそういった彼の得たものを手放して、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて、エジプトへと旅立つのだ。
サンチャゴの住むスペインから、ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸に渡るとタンジェという町に着く。国でいうと現在のモロッコである。アンダルシアでは羊飼いとして一人前であったサンチャゴも、アフリカという異郷の地では、ただの世間知らずの少年である。タンジェに来て早々に全財産をすられてしまうのだ。
そういった苦境の中でも、少年から一人の男へとたくましく成長していきながら、様々な人たちに出会い、目指すピラミッドへと進んでいく。
この本を読むと、子供のころには誰もが夢を持っていて、それを実現できると思っていたということを思い出させてくれる。多くの人は、ある時今いる環境に満足して(もしくは満足したと自分を思い込ませて)、夢をあきらめてしまうだろう。サンチャゴも、そういった満足を得そうになりながら、本当に自分が望んでいるものはなんだったのかと思い起こすのである。
そういった強い願望と、そして前兆に従うことで、ピラミッドに近づいていく。
サンチャゴは、夢や占い、さらには風や鳥などから、前兆を知り大いなる力に導かれていく。私は信仰心もないし、そんなことは非科学的だと思う。しかし、人が強く望むこと、そして好機をとらえて、そして強く信じて取り組むことが、なにかを実現することの原動力となることに疑いはない。そして信仰というものは、強く信じさせてくれる力そのものだ。心の強い人は自分を信じることで前に向き続けることもできるだろう。しかし多くの人は、自分以外のどこかに信じる対象をおかなくては歩き続けることはできない。だからこそ、宗教があるんだと思うし、信仰心の重要性はそこにあると感じた。
最後に本書のなかで気に入った箇所を抜粋
それは純粋な「大いなることば」だった。それは宇宙が無限の時の中を旅する理由を説明する必要がないのと同じように、説明を要しないものであった。少年がその瞬間、感じたことは、自分が、一生のうちにただ一人だけ見つめる女性の前にいるということだった。そして、一言も交わさなくても、彼女も同じことを認めたのだ。世界の何よりもそれは確かだった。彼は両親や祖父母から、結婚相手を決める前には、相手と恋におち、相手を本当によく知る必要があると言われていた。しかし、おそらく、そのようにいう人たちは、宇宙のことばを一度も学んだことがないのだろう。なぜなら、そのことばを知っていれば、砂漠のまん中であろうと、大都会の中であろうと、この世界には、誰か自分を待っていてくれる人が必ずいると理解するのは簡単だからだ。そして、そのような二人が互いに出逢い、目と目を合わせたとき、過去も未来も、もはや重要ではなくなる。その瞬間しかないのだ。
ひとめ惚れの説明としては大仰すぎる気もするが、とても素敵な文章だ。
男が自分の運命を追求するのを、愛は決して引き止めはしないということを、おまえは理解しなければいけない。もし彼がその追求をやめたとしたら、それは真の愛ではないからだ……大いなることばを語る愛ではないからだ
これはオアシスに留まるかどうかを悩むサンチャゴに、錬金術師が伝えた言葉である。男の追求を阻むものは決して真の愛ではないと…奥さんや彼女にこんなこと言ったら怒られてしまいそうだが…
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