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数字の重要性と危うさ~2017年に話題になった研究から考える~

2017年ももうすぐ終わり。みなさんにとって今年はどんな一年でしたか? 科学研究においては、イギリスのオルトメトリク社が この一年で最も話題になった研究Top100 というのを先日発表しました。 そして、このランキングの第三位に日本人研究者の論文が選ばれました! おめでとうございます!! どういった研究かというと、、 「 女性医師の方が男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低い 」 つまり、誤解を恐れずにいうなれば、 女性医師の方が男性医師より”平均的に”腕がいい 、ということ。 まず、先に断わっておくと、この研究はアメリカでおこなわれたもので、アメリカの医師のデータに基づいています。なので、そっくり日本に当てはまるものとは限りません。 どれくらい、死亡率・再入院率が違うかというと 30日死亡率が、男性医師11.5%に対して、女性医師は11.1% 30日再入院率は、男性医師15.6%に対して、女性医師は15.0% それぞれ、0.4%と0.6%違うという結果が得られたようです。 小さくて大きな0.4%の違い どうでしょう?この違い。大きな違いと感じましたか?それとも小さいと思いますか? 個人的には、0.4%程度の違い大したことないんじゃない?なんて最初思いました。 しかし、どうやらこの違いなかなかに大きな違いのようです。 詳しくは、 研究者ご本人のブログ をご覧になった方がいいかと思いますが、この違いどれくらいか、もう少し実感しやすい数字にしましょう。 もし、アメリカ全土の男性医師(ここでは内科医)が女性と同水準の医療の水準になれば、なんと32,000人もの患者が亡くならずに済む計算になります。 そっくりそのまま、日本に当てはめても、1万人くらいの患者が救われる推定なんだそうです。 こう聞くと、大きな違いだと考えるようになりませんか? 同じ情報でも、数字の見せ方によってここまで、伝わり方が違うんですね! 代わりの指標 そして、もう一つ気になったことがあります。 そもそも、なぜこの論文がランクインしたのでしょう? 素晴らしい研究であることはもちろんなのですが、このランキングはどうやって決められたんでしょう?? 近年、論文の重要性を示す指標として、オルトメトリクス(Altmetrics)というも...

読んだ本メモ⑳ 「ゼロから作るDeep Learning」 斎藤康毅著 オライリージャパン

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科学読み物、小説ばかりでなくてこういうものも読んでいる。読んでいるというか、プログラミングのスキルアップのときの教科書や辞書的な使い方として、オライリージャパンの書籍はよく利用しているのだが、今回読んだものは、昨今注目の的であるディープラーニングの理論をおおざっぱに理解する上で非常にためになったので、ここで取り上げた。 本書は、Pythonを使いながら、Deep Learningを実装し、その理論を学ぶことを目的としている。Deep Learningを学ぼうという人であればもちろん、Pythonという言語のことはご存じだろう。本書はPython初学者のみならず、プログラミングに馴れていない方でも十分にキャッチアップできる内容だと思う(個人的な感想です。Python入門に1章分紙面が割かれている)。 また、実装をすることでDeep Learningの理論の理解がより一層進むのは確実だが、Deep Learningの基本的な理論を知りたいだけであれば、各章のおおむね前半部分にて記載された、アルゴリズムや数学的背景を追うだけでも十分だと感じた。 実装、理論の理解いずれの目的にしても、初学者でも手に取りやすい入門書である一歩言うで、物足りなさも多少は覚えるが、入口としては適した一冊だろう。今後のためにと、Deep Learningの基本理論について本書の流れに沿って用語解説の形で以下にまとめた。 パーセプトロン: アルゴリズムの一つ。複数の信号を入力として受け取り、一つの信号を出力する。ノード(ニューロンとも呼ばれる)とそれらを結ぶエッジによって構成される。各エッジには 「重み」 が、ノードには 「バイアス」 (出力をするかどうかのしきい値)がパラメータとして設定でき、パラメータによってANDやORゲートといた論理回路を構成できる。さらに、それらの組み合わせ(例えば、二層にすることでXORゲートが可能)によってより複雑な判別も可能となる。 ニューラルネットワーク: 入力層、中間層、出力層で構成される多層のパーセプトロンであるが、出力の決定にパーセプトロンのように定数のバイアスを用いるのではなく、 活性化関数 を用いる。正確には、パーセプトロン(もしくは単純パーセプトロン)では活性化関数に「ステップ関数」を採用していると言え、ニューラルネットワークでは、...

AIの発展と脳科学

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今月のサイエンス誌のニュース記事はAIだらけだった。そのなかの一つ「The AI detectives(AIの探偵)」はAIの発展とその問題点について触れている( Paul Voosen, Science  07 Jul 2017 )。 最近のAIの発展の背景には、深層学習(Deep Learning)という機械学習の手法がある。 機械学習というのは、AIの根底にある技術のことで、人間が学習によって培う判断をコンピュータにさせるための手法一般のことだ。 そして深層学習では、多層構造のニューラルネットワークというものを用いた機械学習手法の一つだ。 人間の大脳の情報処理構造を参考に、情報の受け渡しをおこなう多数のニューロンによって構成されたネットワークをコンピュータ上に設計することで、高度な機械学習が実現されている。 ここで機械学習について概説したい。例えば、画像からイヌとネコを判別するようなシステムについて考えてみよう。 イヌが映っている写真、ネコが移っている写真、このような画像データの一つ一つにラベル(「イヌ」、「ネコ」というふうに)をつけたリストを機械学習のシステムに与える。するとシステムは、画像の特徴を分析し、「イヌ」の概念、「ネコ」の概念のようなものが形成される(判別器という)。すると、新しく画像を与えたときには、形成された判別器にしたがって、それが「イヌ」なのか、「ネコ」なのか判別できるというわけだ。判別の質は、与えたデータ量に依存することとなる。 もちろん、イヌとネコを見分けるだけでなく、このサイエンス誌の記事内で触れられているように、シマウマ、消防車、シートベルトなどありとあらゆる画像データを与えることで、様々な物体を認識できるように訓練できる。 ここで、個々のニューロンにクローズアップして、そのニューロンが何に反応するのか、確認してみよう。すると、あるニューロンはどうやら「顔の輪郭」に反応するようになったことが分かる。どんなサイズでどんな色であっても(おそらく人間の顔じゃなくても?)、顔らしき輪郭をとらえれば、そのニューロンは反応するのだ。 しかし、不思議なことに、誰も「顔」を認識するようにこのシステムを訓練していないのだ。「人間」というラベルづけさえ行っていないという。 にもかかわらず、この判別機は「顔」の概念...

入力インピーダンスってなに?

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前の投稿に引き続き、基本をおさらい。 脳波でも筋電でも、はかるものは電位差(電圧つまり単位はV(ボルト))だ。 生体内の神経細胞が発する電位差は非常に小さい! 脳波なら、数十マイクロボルト。 筋電は発揮している力によるけれど、数百マイクロボルト程度である。 そんな微弱な信号を計測するために、脳波(筋電)計がある! 皮膚上に貼付した電極間の電位差を、アンプによって増幅し、サンプリングする機器だ。 計測工学の超基礎だけれど、アンプには入力インピーダンスというものがある。 基本的には、入力インピーダンスは高いほど良い!とされている。 さて、入力インピーダンスってなんだろう? インピーダンス、日本語で言うと抵抗のことである。単位はΩ(オーム)だ。 脳波計測のときにはよく、「インピーダンス(抵抗)を落としましょう」と言ったりする。インピーダンスを落とさないと、ノイズが大きくちゃんと脳波を計測できない。 このインピーダンスは、正確には「接触インピーダンス」という。 入力インピーダンス、そして接触インピーダンス。 それぞれいったいどんな抵抗なんだろう? 抵抗はギザギザで書く派です(笑) この回路は、電極を設置した頭皮上を簡略化したものと思ってほしい。 接触インピーダンス(Zs)とは、皮膚の角質などの組織の持っている抵抗値を示している。一方で、入力インピーダンス(Zi)は脳波計内部にある抵抗だ。 知りたい脳波(電位差)はEとする。そして、アンプに入る電位差はVである。理想は、V=Eとなることだ。しかし、接触インピーダンスがそれを許してくれない。 この回路から、導かれるVは式の通りとなる(分圧の法則だ!)。 この式が意味するところを考えよう。 もし、接触インピーダンスと入力インピーダンスが同じだったら、V=E/2となってしまう。つまり、計測できる電圧は半減することとなる。Zi/(Zs+Zi)を1に近づけることが出来れば、VはEに近づく。そのためには、Ziを大きく(高いほど良い!とはこういうことか!)、Zsを小さくすることである。 入力インピーダンスはアンプの性能次第だ。 一方で接触インピーダンスは、計測するときに皮膚の角質を落としたりといった前処理によって、下げることができる。 ここから余談......

頭皮脳波はなにを見ている?

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最近、いろいろと基本をおさらいしていたので、ここでまとめておこうと思う。 人の脳活動を計測する手法はいろいろある。 非侵襲なものだと、fMRI、PET、EEG、MEG、NIRS… 侵襲的なものだと、ECoG、LFPなど fMRI、PET、NIRSというのは神経活動にともなう脳血流を見る手法で、 それ以外の手法は、神経の電気的な活動を直接計測している。 ここでは、EEG(頭皮脳波)などの神経の電気的な活動の測定法について考える。 細胞外記録とは 神経細胞は、シナプスを介して、他の神経細胞と連結している。 神経活動といっているのは、神経の発火や膜電位の変化のことだけど、 もちろん、神経細胞に電極を刺して計る(細胞内記録)のように、膜電位を直接記録することは生体ではできない。人を対象とした計測で用いる手法は程度差こそあれ、細胞外記録になる。 ECoG、 LFP 脳表に設置した電極から計測するECoG(皮質脳波)や、脳に刺入した電極から計測するLFP(局所フィールド電位)は、局所的ではあるものの時間分解能も空間分解能も高い信号が得られる。 しかし、てんかんやパーキンソン病などの治療のために、電極を外科手術によって留置した患者さんの協力を得られない限り、計測はできない。 EEG そこで、一般健常者でも患者さんでも、安価(比較的に!)な設備で神経活動を測定できる手法はEEG(頭皮脳波、Electroencephalogram)である。 EEGは頭皮に電極を貼付し、その電極から微弱な電位変化を記録する手法だ。 どれくらい微弱かというと、せいぜい数十マイクロボルト程度。商用の交流電源は100Vなので、だいたいそれの1000万分の1だ。 というのも、脳とEEG電極は、頭皮、頭蓋、髄膜などの組織によって隔てられている。 EEGによる神経活動の計測は、 例えるなら、東京ドームの外から観客の拍手や歓声を聞くようなものだ。 個々の観客がばらばらに手を叩いても、外からはわからない。 ホームランでも打てば、観客は一斉に歓声をあげるので、外からもわかるだろう。 観客(神経細胞)が一斉に叫べば、外の人(脳波計測)にも聞こえる これはつまり、神経が一斉に(同期して)発火すれば、EEGでも計測できるということだ。 正確に...

読んだ本メモ⑲ 「アンドロイドは人間になれるか」 石黒浩著 文春新書

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アンドロイド研究の第一人者、石黒浩教授の著書「アンドロイドは人間になれるか」 石黒教授の研究室では、ヒト型ロボット、アンドロイドの開発をおこなっています。 美しい容姿のアンドロイド、コミュニケーションのためのヒト型ロボット、落語をする米朝ロイドやマツコ・デラックスとうり二つのマツコロイドなどなど... まずは、用語を整理しようと思います。 本書によると  「ロボット」は、見かけからして機械然としているものである。コンピュータにセンサとアクチュエータ(駆動装置)がついていれば、なんでもロポットだ。  対して「アンドロイド」は見かけが人間そっくり、ただし中身は機械の「人間酷似型」のもの(見かけだけだと、人間かどうか区別つきにくいもの)を指す。  その中間のようなものが、「ヒューマノイド」だ。手足がある、顔があるといった、擬人化しやすい「人間もどき」、それなりに人間っぽいものを指す。たとえばドラえもんはヒューマノイドではあるが、アンドロイドではない。 〜ちなみに、本書には登場しないが、人間がベースで機械が加わったものは、サイボーグ。人工内耳など、機能代替の装具は広義の意味ではサイボーグといってもいいかもしれない。〜 人間に酷似したロボットを作ることは、人間について考えることでもある。 著者は最初、「ヒトの気持ちを考える」ために、人工知能の研究をしていたそうです。 しかし、脳の神経回路を研究して、それを模倣しようとしても、いっこうに「人の気持ち」はわからない。 それは、「からだ」がないからだ。 図らずも、つまらないだじゃれになってしまいましたが、 脳しかない人間は、賢くなりえないのだ。体がなければ何も「経験」ができず、経験がなければ過去の出来事を次の行為にフィードバックすることができない。  人は、目で見て、耳で聞いて、指で触れて、、五感を通して情報を得ることで賢くなる。 わたしも、人の脳について研究しているけれど、からだはとても重要。もちろん、脳がからだを制御しているのですけれど、からだからの感覚情報のフィードバックが脳に変化をもたらしてもいます。からだからのフィードバックがなければ、脳は機能を保つことが出来ません。 生物は、生存競争のなかで、環境に適応する力を身につけてきました。それは、世代を介して「進化...

読んだ本メモ⑱ 「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」 大栗博司著 幻冬舎新書

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”重力とは何か” 当たり前すぎて、普段気にも留めませんが、私たちが地球から飛び出てしまうことがないのは、重力があるから。地球上のどこに行っても、たとえ空を飛んだって、重力は私たちに働いている。 そんな重力が、実は”幻想”である、と言われたら簡単には信じられませんよね? 相対性理論、量子力学、超弦理論、、、、 この世界を理解する統一理論を探る、物理学の歴史のお話を、 著者の大栗博司さんは、わかりやすく、かつ、ごまかさすことなく、教えてくれます。 私は自分自身がサイエンスに携わっている身なので、日々科学研究の意義について考えています。 科学の話は聞いていてワクワクするし、人間には程度の差こそあれ等しく好奇心があると私は思っています。ですので、この世界の仕組みを解き明かすこと、さらにその発見を社会に広めること、そのものに本質的な意義があると考えています。 本書の冒頭でもこのように語られています。 1969年、フェルミ国立加速器研究所の初代所長のロバート・ウィルソンが、米国議会に証人として呼ばれて、「素粒子加速器の建設は、わが国の国防にどのように役立つのか」と問われたことがあります。(中略)当時のお金で何億ドルもの予算をかけて建設するのですから、役に立たないのでは国民の納得を得られません。  予算がみとめられるかどうかの瀬戸際で、ウィルソンはこう答えました。 「この加速器は、直接には国防の役には立ちません。しかし、我が国を守るに足る国にすることに役立ちます」  ウィルソンの答え方も立派ながら、これで納得して計画を通した議会も立派だと思います。事実、フェルミ研究所の加速器は、(中略)長いあいだ世界で最も強力な加速器として活躍し、世界に誇るべき大発見をいくつも成し遂げました。  さらに言えば、科学の発展は一国の名をあげるだけではありません。科学は、合理的な考えを広めることで、人類を迷信や偏見から解放し、宇宙や生命の神秘を明らかにすることで、私たちの世界を豊かなものにしてきました。「科学の目的は、人類の精神の栄光である」という言葉があるように、科学はそれ自体に価値があり、それを生み出すことには大きな意義があるのです。 とはいっても、 その発見は人間社会にとってどんな役に立つのか? 病気が治るのか?、交通事故が減るのか?、それとも地震を...

北アルプス・唐松岳 雪山テント泊

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山域:北アルプス・唐松岳 八方尾根往復 日程:2017年3月18 - 19日 1泊2日 パーティ:2人 装備:雪山基本装備(ピッケル、アイゼン等)+幕営具 カメラ・PENTAX K-30 1日目:白馬八方スキー場(ゴンドラ&リフト)八方池山荘(8:30)--- 山頂(12:30)--- 上ノ樺付近(14:00) 2日目: 上ノ樺付近(7:30)--- 八方池山荘(9:00) ※時間はおおよそです。トレースはしっかりあり、雪に足を取られることはない中で、写真を撮りながらの時間です。 3月17日(金) 23時出発の夜行のスキーバスを利用する。新宿都庁下の駐車場はバス利用客でごった返していた。スキーへ向かう春休み中の学生だらけの中、ピッケルをザックに刺した二人組はさぞかし浮いていたことだろう。金曜夜発で土曜の早朝に現地に着く夜行バスは非常に便利だ。しかし、残念ながら私は移動する乗り物で眠ることがとても苦手である、繊細なので。しかもあろうことか、耳栓を忘れてしまった。ニット帽を目深にかぶり寝ようと試みていたが、到着までの約6時間ほとんど眠れなかった。唯一寝れたのは、休憩でPAに停車した20分間の間だけ。 3月18日(土) 早朝5時半。夜行バスは八方のバスターミナルに到着した。気温はさほど低くないが、とりあえず近くのローソンに避難。ゴンドラが動きだすまでには時間がある。ローソンにはイートインスペースもあり、ここで朝ごはんとする。バスや自家用車で来たスキー客が続々とローソンにやってきて、店内は大混雑となる。この時間空いているお店はここだけなのだ。ゴンドラは7:30から営業開始をする。7時過ぎにゴンドラの駅に行くと既に並んでいる人がいた。並んでいるとどんどん列は伸びていった。私たち同様の登山客もいれば、バックカントリーであろう人たちも多い。登山等でゴンドラに乗車する場合、チケット購入時に登山届が必要となる。事前に用意していなかったために、登山届を記入した後、改めて列に並ぶはめになった。次回は気をつけたい(今回二度目なはずなんだが)。ゴンドラと二つのリフトを乗り継ぐと、八方池山荘に到着する。ゴンドラ&リフトは往復で一人2900円である。 今日は絶好の登山日和。雲ひとつない晴天に、そよ風さえ吹いていない。八方尾根には大勢の登山者が列をな...

八ヶ岳・天狗岳 雪山日帰り登山

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山域:八ヶ岳 天狗岳 日程:2017年2月19日(前夜泊+日帰り) パーティ:5人 装備:ピッケル、アイゼン カメラ:PENTAX K-30 行程:渋の湯(8:45)ー黒百合ヒュッテ(11:00〜11:50)ー東天狗岳山頂(13:30)ー黒百合ヒュッテ(14:30)ー渋の湯(15:30) 2月18日 19時、武蔵小杉駅を出発。 小型車に5人でぎゅうぎゅう。多摩川沿いを走り、いつも通り府中スマートで中央道に乗る。そして、いつも通り談合坂SAに寄って、今日もスタ丼を食べる。 今夜は、こぶちざわ道の駅を寝床とする予定。23時ごろ道の駅につく。雪がちらついており、うっすら積もっている。ノーマルタイヤなので、道の駅のちょっとした坂でスリップ! 駐車場には先客が。キャンピングカーもあるし、テント張っている人もいる。雪だけでなく風も吹いてきた。明日、山は荒れるかなぁ?昨日の金曜は全国的に暖かくなり、東京では最高気温が20℃近くなった。雪崩も心配だ。 ぼくらもテントを張り、明日に備え寝ることにする。 2月19日 朝5時。 なかなか冷え込んだせいで、十分に睡眠をとれなかった。 まずは登山口である渋の湯まで一時間ほどのドライブ。車にチェーンを装着し出発! 急なカーブでは後輪がすべるが、順調に登っていく。渋の湯に近づいてくると、徐々に路面の雪が多くなってきた。すると前から車がバックしてきた!!僕らの後ろにはもう一台。一言いってほしい。無言でバックされても困る。道幅が広いところで追い越させてもらう。が、こちらはノーマルタイヤ、思うように進まない。なんとか抜けたけども、なんか前輪がカタカタ音がなっている!!しかし一見すると特に問題なさそう。。。とりあえず、もうすぐ渋の湯なので、そのまま駐車場まで向かう。 駐車し、よくみると両輪ともチェーンが一部ちぎれているではないか!!どうしよう… 例えば、 私たち)渋の湯の旅館に、チェーン売ってないかなぁ〜 渋の湯)売ってないよ。ノーマルタイヤなんかで来るんじゃないよ。常識知らず! 私たち)すみません… いろいろ考えたものの、 どうにか、チェーンを手に入れたとしても、またトラブルが起きる可能性もある。 安全策をとりましょう。 JAFを呼ぶ。という結論に。 JAFは後で呼ぶとして、とりあえず天狗岳登ろ...

N・S・ハルシャ展 チャーミングな旅 六本木・森美術館

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現代アートって作家のことを知らないことがほとんどで(私の場合)、 なかなか見に行くきっかけがない。 今回も本当は違う目的で六本木に来てて、たまたま見たのが、 インドで活躍するアーティスト、N・S・ハルシャの企画展だった。 森美術館で開催されている現代アートの企画展って、 実は思い返すとどれも面白かった。 すごく見ごたえがあって、少し高めの値段設定だけど満足感がある。 といっても、やはりアンディ・ウォーホルとか村上隆とか、 作家も著名で、話題になってる企画展に行ってることがこれまではほとんど。 今回は本当にたまたま、行くほんの10分前までこの企画展のことを(明示的には)知らなかったくらい。( 潜在的 には知ってたと思う、笑) アートセンターの方で開催されている「マリーアントワネット展」はなんと80分待ち。 行列を横目に、ハルシャ展へ行くと、来場者はぱらぱらといる程度。 じっくり鑑賞できてよかった。気づいたら3時間も経っていたくらい時間を忘れて楽しめた。 ハルシャはインド南部のマイスール生まれで、今もマイスールを拠点に活動しているのだが、 マイスールなんてもちろん知らなかったし、インドで知っているところというとデリー、ムンバイ、バンガロールといった大都市ばかり。インドの田舎?(マイスールは歴史的には古い町で、中心地はそれなりに栄えていそうだけれど)の様子など知ることももちろんなかった。 そんななか、唐突に私の頭に飛び込んできた絵や情報はとても新鮮だった。 伝統と変革、農業とビジネス、資本主義、国家、大衆、、、 そういったものがキーワードになった作品たちが多く、マイスールという町が描かれているのに、インドという国、さらには世界についても問いかけをしているそんな印象がある。 また、多言語、ヒンディー教などの文化的背景も感じさせる。 この企画展でインドの文化も学べてしまうのだ。 ちなみに、ガネーシャ(象頭の神)はシヴァの息子らしい。。。似てなさすぎる。 展示の様子 このフロアの中心に置かれたテーブルにはマイスールの地元紙が並んでいる。 (会期中届くようになっているらしい) N・S・ハルシャ《ここに演説をしに来て》(部分)(2008...

読んだ本メモ⑰ 「サブリミナル・マインド 潜在的人間観のゆくえ」 下條信輔著 中公新書

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 今回の講義の最終的なメッセージとして大事なことは、次のことです。つまり人の心が顕在的・明証的・自覚的・意識的な過程だけでなく、潜在的・暗黙的・無自覚的・無意識的な過程にも強く依存しているということ。さらに忘れてならないのは、動物の進化の過程を見ても人の発達の過程を見ても、暗黙知がつねに先立ち、明証的な知の基礎となっていることです。 と本書の冒頭にて書かれている。 タイトルの「サブリミナル」は日本語で「意識下の」という意味。 ヒトの脳活動のなかで、意識にのぼるものはほんの一部だけ。まさに氷山の一角。 いや氷山の場合は約一割が見えるので(水面上)、氷山のそれ以上に見えない部分は広大だ。 意識的な思考はしばしば言語を伴う。 しかし、だからといって言語を持たない動物に思考がないわけではないだろう。人間が成長すると幼児期の記憶をなくしてしまうのは、言語を介した思考か否かというところに関わっている。 赤ん坊のころには、暗黙的な学習(手続き記憶)をしており、成長とともに明証化(宣言的記憶)が可能になる。これが、筆者のいう「暗黙知がつねに先立ち、明証的な知の基礎となっている」という意味だ。 では、大人になった我々は常に明証的・意識的に思考・行動しているのだろうか。 本書は、そればかりではない「潜在的人間観」について語ってくれる。 どんなに好きでも、職業にして報酬をもらうようになるとつまらなくなる とよく言われている。このことは、「ほうびの隠れたコスト」として実験的に証明されている(レッパーとニスベット、1978年)。「 絵をかくのが好きなこどもに、あらかじめ報酬を約束して絵を描かせると、自発的には絵を描かなくなり、絵の質も落ちてしまう  (中略)  もともと面白い仕事でも、過度の外的報酬によってかえってつまらなくなるというわけです。言い替えれば、外的正当化のせいで、本来存在していたはずの内発的動機づけが損なわれたのです。 」ごほうびというものは、そのものの本来の面白さを損なうというコストが付きまとうというわけだ。 また、「コスト」が内容を面白くする場合もある。「入会儀礼効果」(アロンソンとミルズ、1959年)がその好例だ。「 大学の部や同好会など何でもよいのですが、同好の士が自発的に集まる会では、入会のために審査やテストをやる場合がある...

統計について(正規性の検定&関連二群の差の検定)

たまには研究関連の内容を、、、 といってもただの検定方法に関するメモ。 (計算方法ではないです。SPSSの使い方と検定の種類についての備忘録) やり方忘れちゃうので、、、(笑) 私はよく関連二群(pairedとかrelated と呼ばれる)でなんかしらの値に差がないかを検定することが多い。同一被験者で条件Aと条件Bのときで比較、みたいなそんな状況です。 コントロールとかの問題はあるけれど、 取りあえずその辺の問題はクリアしていて関連二群として比較できるデータであるとします。 まずは正規性の検定。 いわゆるt検定は正規分布を仮定した検定方法なので、データが正規分布であることのチェックが必要。サンプル数が多いと正規分布であるとみなすこともできるのですが、生体での実験の場合は被験者数をNとするとせいぜい多くても20~30人。となると小標本になるので、正規性のチェックが必要です。(「バイオサイエンスの統計学」によるとN>25で大標本だそうです。) <SPSSにおける正規性の検定手順> 1.メニューから「 分析 」を選択 2.「 記述統計 」を選択 3.「 探索的 」を選択  ダイヤログが出てくる 4.「従属変数」に検定したいデータを入れる 5.「作図」ボタンをクリック 6.「正規性の検定とプロット」にチェックを入れて、「続行」 7.「OK」をクリック。 8.「Kolmogorov-Smirnov の正規性の検定」とか「Shapiro-Wilk」の有意確率をチェック ※注意点としては 関連二群の場合、群間の差について検定をすることになるので、正規性の確認も「差」について行う必要があります。 個人差が大きくデータそのものに正規性がない場合ても、差の分布が正規分布であるとみなせれば、パラメトリックな検定が使えます。 正規性の検定の結果、帰無仮説が棄却された場合 有意確率が低い(通常は0.05未満)だと帰無仮説が棄却されて、「正規分布とはいえない」となります。なので潔くノンパラメトリック検定を用いる!(関連二群の場合は、ウィルコクソン!) しかし、棄却できない場合は? パラメトリックな手法を使って良いのでしょうか? 棄却されたとしても「正規分布である」と積極的に言えるわけではなく、「正規分布...

ニコンミュージアム 「植村直己 極地の撮影術」

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ニコンミュージアムは品川駅の港南口出て5分ほど、インターシティ内にある。 今年2017年でニコンは創立100周年を迎えるそうな。それを記念して作られたのがこのミュージアムということで、まだ出来たばかり。ニコンの歴史とカメラの仕組みなどが学べる施設で、入場はなんと無料だ。 ニコンミュージアム入り口 そして、創立100周年を記念した企画展「植村直己 極地の撮影術」が開催されている。 ご存知、植村直己は日本を代表する冒険家で、日本人初のエベレスト登頂や犬ぞり単独行による北極点到達などを成し遂げており、多くの貴重な写真を撮影している。 厳しい北極の寒さや犬ぞりの振動によって、既製品のカメラは壊れてしまう。使い物にならなくなったカメラを犬たちに引かせることを植村直己さんは申し訳なく感じたそうだ。そこで植村直己の冒険に耐えうるカメラとして開発されたのが、「ニコンF2チタンウエムラスペシャル」だ。この企画展では、カメラの現物と撮影された写真、カメラ用の防寒ケース、グローブ、犬ぞりなどなど冒険を共にした貴重な品物が展示されている。 館内は展示品によっては撮影可能 犬ぞり! 企画展以外には、これまで発売されてきた数々のカメラが展示されていたり。 カメラだけでなく、顕微鏡を始めとする研究や医療向けの計測装置など、ニコンの技術力の高さがうかがわれ、カメラメーカーではないニコンを知ることもできた。 ほかにも子供向けに、レンズの仕組みを学べたり、絞りやシャッタースピードを変えた時の写真の違いを体験できるコーナーもあった。 ミュージアムショップも、小規模ながら充実していた。なぜかニコンようかんが売られていたが、なぜようかんなのだろうか…

デトロイト美術館展 上野の森美術館

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上野の森美術館で開催されているデトロイト美術館展に行ってきた。 デトロイト美術館のことはよく知らなかったけど、著名な画家の作品を数多く所有しているみたいだ。自動車工業で潤った資金で、ルノワール、ゴッホ、ピカソなど名だたる画家の作品を所蔵している。 ディエゴ・リベラ「デトロイトの産業」 メキシコの画家ディエゴ・リベラによる壁画、を再現したもの。 デトロイト美術館の中庭にあるらしい。デトロイトらしく自動車製造の様子が描かれている。結構面白いのに、注目している人が少なかった。動線とかもう少し考えて配置したらもっと注目されるのに! 今回の企画展では、 印象派の時代から、ポスト印象派、そしてドイツ退廃芸術、さらにピカソやマティスなどの20世紀の絵画というながれで著名な作品が並んでいた。行った日が撮影可の日だったので、いろいろと写真を撮れたのは良かったが、周りのシャッター音が気になるし、いい場所で撮影しようとして鑑賞の邪魔になっている方々も見られた。 ルノワールに始まり、モネ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ・・・とこれでもかと続く。 だが正直作品数は多くないし、なんかあまりまとまりもない。まあ、印象派はともかくポスト印象派は別にまとまりのあるものではないのでしょうがないけれど。あと、ゴッホの自画像が明らかに客寄せパンダ的な展示のされ方をしている。。。 まずはルノワールの作品が並ぶ ゴッホの自画像 ゴッホの「オズワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」 日本発上陸らしい! ドイツ退廃芸術は、いままでよく見たことがなかったので、今回作品をみることができて良かった。ナチスが退廃芸術として、当時のドイツ絵画を非難したことによって、皮肉にも定義された。力強い色彩で描かれているけれど、どことなく不健康そうなそんな絵画たちが並んでいた。 カール・シュミット=ロットルフの「雨雲、ガルダ湖」という作品が気にいった。イタリアにあるガルダ湖と周辺の山々に雲間から陽射しが降り注ぐ様子を描いた作品である。しかし、どことなく北方的な感じの神秘的かつ寂しさの漂う雰囲気である。ドイツ人が描くとイタリアもこうなるのか! 最後には、ピカソ、モディリアーニ、マティスの絵画が並んだ。 アンリ・マティス「コーヒータイム」 なんか可愛い。 ...

中国ベンチャー、AIを使ったヘルスケアアプリを発表

中国ベンチャー(iCarbonX)が人工知能(AI)を使ったヘルスケアアプリを今月5日に発表したそうです。 出典はネイチャーのニュース ( http://www.nature.com/news/chinese-ai-company-plans-to-mine-health-data-faster-than-rivals-1.21258 ) アプリの性能とか未知数ですし、今後の発展次第な感はありますが、先越されたなぁー なんてね。 割と誰でも思いつくことだし、既に活動量計の情報を使って~とか、食事を記録して~、健康管理をするアプリは数多存在している。しかし、既存のアプリはあくまでデータを可視化(グラフ化等)し、提示するに過ぎなかった(「摂取カロリーが増えてるから控えましょう」みたいな)。 しかし、このアプリではデータをAIによって分析し、発症のリスクを教えてくれるというコンセプトである。 ちょっと前まではゲノム至上主義?的なブームがありました。個人のヒトゲノムが安価に解析できるようになり、ゲノム解析からの将来の発症リスクを教えてくれるサービスが注目されていました。 しかし、上述の記事の中でも書かれていますが、例えば心疾患の罹患率が1~2%の遺伝子を特定することにどれほどの意味があるのだろうか、と。 それよりも、さまざまな組織の生体分析をし、現状の健康状態を教えてくれるほうが実用的じゃないの?とそのように、iCarbonXの創設者であるJun Wang氏はおっしゃってるわけだ。 つまりは、医師の代わりになるアプリといっても過言ではない。 この組織でこのタンパクが増えてたら、この疾患の疑いが~とか、体温、血圧もろもろのバイタルサインからAIが診断をくだしてくれるなんてことになるのだろう。(AIで医師国家試験を合格しよう、なんて試みもされてるし、将来的にはAIが診断なんて当たり前になるだろう。) とにかく情報が多ければ多いほど、AIは精確に診断できるようになるだろうから、ゲノムの情報と活動量計の情報も合わせたら精度は上がるだろう。将来的には診断だけでなく発症する前に予防も可能になるかもしれない。 そしたら、「ゲノム解析をしていて、生体分析を定期的にしていて、アプリを使っている人は、病気が重篤化する可能性が低いだろうから、保険料が安く...

正月登山 南アルプス・甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

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さて、今年の年越しはどこへ登ろうか。 2016年は後輩たちと登山にいくことが多かった。年越しも彼らがプランニングしてくれ、甲斐駒ヶ岳にいくことに決まった。黒戸尾根を登ってのカイコマは初めてだ。三大急登と呼ばれるその尾根は2200メートルの高度差を誇る。上部は尾根も細く、はしごや鎖のある岩場が多い。雪が多くなる2月3月になると難しくなる。年末年始はまだ雪は少ないので、鎖・はしごが利用できるはずだ。 この年末は、かなり天候的には恵まれていた方だが、それでも強い風が吹き付けることもあった。今年は甲斐駒ヶ岳でも滑落事故がおきており、男性一名が死亡している。危険と隣り合わせということを常に忘れず、2017年も安全に登山を楽しみたいと思う。 山域:南アルプス 甲斐駒ヶ岳・黒 戸尾根 日程:2016年12月31日〜2017年1月1日(前夜泊1泊2日) パーティ:5人 装備:ピッケル、アイゼン、一応ロープ1本等々 カメラ:GoPro Hero3 30日16時。 後輩自宅近くに集合。コースと装備の確認を全員で行う。後輩の車で、登山口の竹字駒ヶ岳神社へ向かう。20時には着いてたか?たっぷりと睡眠が取れる。駒ヶ岳神社の駐車場はすでに多くの車で埋まっていた。こんなに登っている人多いのだろうか?天気はとても良いらしく、星がとてもきれいだ。 31日朝5時半。 まだまだ暗いなか出発。駒ヶ岳神社で安全祈願しつつ、尾白渓谷への道を行く。吊り橋を渡ると、登山道は尾根へと上がっていく。ただひたすら 登る。当然ながら雪はまだ出てこない。刃渡りで黄蓮谷を登ってきたアイスクライミングのパーティに会った。気温が高く、コンディションは悪かったようだ。刃渡りで我々もアイゼンを装着。今年は、歯の磨り減ったカジタをついに卒業。ペツルアイゼンのデビュー。雪の少ない岩場で早速歯が軋む音に涙しつつ登る。 五合目より甲斐駒ヶ岳 五合目に来ると、カイコマの山頂までが見える。刃渡りは大したことなかったが、この後には鎖やはしごが控えている。慎重に進もう。 長いはしご 12時過ぎ、七条小屋に着く。今日はここで幕営&年越しである。テントはそんなに多くはない。 「いやー疲れた」なんて話をしていたら、いまから山頂へ行こうと思うと一人が言い出した。「明日ももちろん登るけど、今日天気いいし、時間...